コンセプト
とにかく、いろいろな種類のフランス菓子が並ぶ。一歩店に入ると気持ちがうきうきするような楽しい店であること。
26歳でフランス料理の世界に飛び込んで、そして29歳で天才パティシィエ、イル・プルー・シュル・ラ・セーヌの弓田氏と出会う。当時フランス料理の厨房には女の職人は0でした。
互いのとまどいの中で一冊の本と出会いました。文章だけのおおよそこの手の本とはまったくちがったものでした。ひとつひとつのお菓子があるまでに何を伝えたいのか、それを伝えるにはどうすればよいか、想いを技術で具体的にするのです。
彼の心の中には、いつもその根底に想いがあって、想いのために小学校か中学校くらいの理科の知識とそして理論に裏づけされた技術を説明したものでした。ひとつひとつのお菓子には、ひとつずつの詩がそえられてもいました。
ケーキも一般にみるケーキとおもむきが少し変わっているかもしれません。フランス菓子の特徴はそれぞれの味わいがはっきりと主張しあってバランスをとることです。そうではないお菓子がお店にあることは私の想いにそいません。
例えばやわらかいふわふわスポンジに生クリームケーキを1,000円位で売るのは売上的にはとてもプラスです。しかし、フランス菓子とは言えないものを売ることは今までやせがまんしたことの意味がなくなるから、フランス菓子屋のスーリィでは作らない。それにかわるフランス的な組み立てのお菓子を作ればよいのです。あたり前のことをあたり前にやることの積み重ね、やるべきことは必ずやり、やってはならないことはやらない。それがスーリィの職人の育て方です。
どちらがいいとか悪いとかではなく、日本の料理文化は、ひとつずつとっていって調和を形づくる。それに対してフランスではひとつ足し、また足しそしてまたこうして調和をはかる。だから、スーリィのお菓子がおいしいとき、その調和がうまくとれている状態のときです。
あくまでも伝統的なものを芯にその中に新しいものを取り入れる。一貫してフランス菓子の王道をはずすことがないように常に自分にいいきかせていく。自分は弱いと知っているからです。